東京高等裁判所 昭和39年(ネ)162号 判決
控訴人は「本件土地を賃借して占有している。」と主張する。(証拠)によれば、大正七年一月頃被控訴人先代新井秀一郎が教職のため郷里石下町を遠く離れることとなり、約一五年帰郷しない見透しであつたので、実弟である控訴人先代小泉幸吉に留守宅に残す老母と娘の世話や留守居を頼むとともに、農地、宅地、建物等不動産一切の管理公租公課の支払および新井家としての祭祀や冠婚葬祭の贈答等を依頼し、小作させているものを除き田畑はすべて幸吉に耕作させ、なお田畑約三反歩を幸吉に贈与することを約し、将来秀一郎が石下町に帰つてきて幸吉の住宅が必要な場合には幸吉所有の宅地に平家一棟建坪一五坪、納屋一棟建坪一五坪を建築し幸吉に提供することを約したこと、秀一郎が郷里を離れた後幸吉が一家を挙げて秀一郎の留守宅に移転し秀一郎の残した家族の連絡や新井家の祭祀等をなし新井家所有の不動産を管理し本件田畑(たゞし、中途で一部の交換があつたことは前記のとおり)を耕作し公租公課を支払い祭祀費交際費等を支弁してきたこと、秀一郎が昭和二〇年五月頃帰郷しその後は不動産の管理、公租公課の支払、新井家の法事交際等を自ら行つていたことが認められる。右事実によれば、本件土地の使用関係は賃貸借関係と認めることはできない。賃貸借関係の存在を前提とする控訴人の右主張は理由がない。また、右使用関係は準委任契約によるものと解されるが、控訴人先代幸吉の死亡により同契約は終了したといわなければならない。
他に本件土地を占有する正当な権原のあることの主張がないから、控訴人は被控訴人にこれを明け渡し、昭和三三年二月一一日から明渡完了まで相当賃料額であることに争いない一月金千円の割合による損害金を支払う義務がある。
(千種 渡辺一 岡田)